梅雨時期や冬の季節になると、気になるのが「カビ」のこと。おうちのいたるところに、カビが出て困ったという経験は、一度や二度ではないはずです。しかも、退治したと思ってもすぐに復活してきますよね。

カビに悩まされないためには、どうすればいいのでしょうか?

コジカジ編集部は、「カビ退治するには、まず敵を知ることから」と、カビを専門に研究する千葉大学真菌医学研究センターの矢口貴志先生に相談してみることに。

カビのことを知れば知るほど、本当に必要な予防法がわかってきました。これでカビ対策は万全です!

カビはおうちのいたるところに隠れている

カビの研究をする千葉大学 矢口准教授

ーーカビに困らせられているおうちがたくさんあります。おうちのなかのカビを一掃するには、どうしたらよいのでしょうか?

矢口先生:
実は、空気中にはたくさんのカビの胞子がいます。目に見えませんが1m³の空気中に100〜1,000個ほどの胞子が漂っているんです。

その胞子をすべて取り除くのは至難のワザ。カビが生えるのを「ゼロ」にすることは基本的にできません

ーーそんなにいるんですか…。

矢口先生:
もちろん「日が当たりやすい/当たりにくい」など、自宅の立地や家庭内の環境によってカビの胞子の量が違います。

食品工場などでは衛生基準にのっとってその数値を100以下にするといった目標があるなど、カビの胞子を減らすことがカビを発生させないためには大切なわけです。

なので、生えてしまったカビを一掃するというよりも「いかにカビの胞子を増やさないか」を考える方が重要といえます。

ーーカビの胞子を増やさないために、まず何ができるのでしょうか?

矢口先生:
カビの胞子は「部屋の外」から入ってきます。自然界ではカビやバクテリアなどの微生物は土のなかに潜んでいるので、土を持ち込まないようにしましょう。

たとえば、靴の裏や野菜についた土などを家庭内に持ち込まないようにするだけでも、カビ対策になりますよ。

カビを放置しておくと体によくないの…?

手 肌

ーーカビの原因となる胞子がおうちのなかにたくさんいることはわかりました。胞子が多いと体に害はないのでしょうか?

矢口先生:
残念ながら、カビの胞子は体に害がある存在です。一番問題になるのが呼吸器系のアレルギー

影響度は人によってまちまちなので、具体的な指標はありません。花粉症といっしょで人によるため、同じ量吸ってもなんともない人もいれば、くしゃみが頻繁に出てしまう人もいます。

裏をかえすと、なるべくカビの胞子を吸わないような環境にいれば、花粉症と同じで症状はやわらぎます。できるだけカビの胞子を減らしておくに越したことはありません。

3つの条件がそろうと部屋でカビ繁殖しやすくなる

エアコン

ーーでは、カビが繁殖する条件って具体的には何なのでしょうか?

矢口先生:
カビが発生する主な条件は3つで、「温度」「湿度」「栄養」です。

具体的に、
 ① 温度が20〜30℃
 ② 湿度が60%以上
 ③ 皮脂や石鹸カス、ホコリなどの栄養(エサ)がある
といった環境でカビはよく育ちます。

もちろん、温度が20℃以下だったとしてもカビが生育しないわけでもありません。そもそも日本は高温高湿なので、カビが生えやすい環境です。現在の住環境を考えれば、年中カビが生える可能性があると考えた方がよいでしょう。

外から入ってきた胞子は、家庭内のホコリに潜みます。ホコリがカビのエサになり、繁殖しやすい環境だからです。

この3つの条件が整うと、早いものだと2〜3日、黒カビでも5〜10日ほどで、目に見えるまでに大きく成長します。

ホコリ1gにカビの胞子が1,000〜100,000個も潜んでいるという話もあるため、カビの胞子を持ち込まないようにするだけではなく、ホコリなどを溜め込まないことも大切なんですね。

原因がわかればカビ対策は簡単

ほこり ホコリ ハウスダスト

ーーカビが生えると、掃除が面倒だったり体に悪影響も考えられたり、いいことはないですよね。カビを発生させないために、どんなカビ対策が必要なのでしょうか?

矢口先生:
カビ対策は、それほどむずかしくありません。先ほど説明した、カビが繁殖しやすい3つの条件「温度」「湿度」「栄養」をカビが好まない反対の環境にすればよいのです。

「温度」を調整するのはむずかしいですが、「湿度」と「栄養」の2つを調整するだけで発生しにくくなりますよ。

窓を開けて部屋の換気

ーーすぐに始められるカビ対策の具体的な方法を教えてください。

矢口先生:

「湿度」の調整でいえば、

● こまめに換気して湿気を外に出す
● 換気扇をまわす
● 加湿器をむやみに使いすぎない(マメに切る)

などが考えられます。

シンクや洗面所など、もとから湿度が高くなりがちな水回りなら、

● 洗濯機のフタはあけておく
● 濡れたタオルを放置しない
● お風呂は24時間換気する
● 除湿剤や乾燥剤を置く

などが考えられます。

窓際の棚 リビング 日陰

ーーもう1つの「栄養(汚れ)」の点ではどんな対策ができるのでしょうか?

矢口先生:
栄養となるホコリなどの汚れをこまめに取り除いてあげることが基本です。

あとは、栄養の観点でも「換気」が有効だったりします。風通しのいいところだと、ホコリが定着しないので、カビも生えにくくなるんです。

部屋の角、家具の裏などにカビが生えやすいのは、風通しが悪く、ホコリがたまりやすいので、カビの胞子が定着しやすいからなんですよ。

そういうところを意識して念入りに掃除することも大事になってきます。

ふだんは掃除機を全体にかけるだけで大丈夫ですが、週末などの時間にゆとりがある日には少していねいに掃除するのがよさそう。ホコリを減らすという意味では、空気清浄機を使うのも有効とのことです。

カビができたときの対処法は2つ

キッチンハイター 塩素系漂白剤

ーー最後に、実際にカビができてしまった場合の取り方を教えてください。

矢口先生:
カビは放っておいてもなくなりません。見つけたらできるだけすみやかに取り除きましょう。

拭き取るだけだと、その場ではキレイになっていても、いずれ再びカビができてしまいます。カビ取り剤を使ってしっかり取り除くのがポイントです。

『キッチンハイター』や『カビキラー』など、いわゆる市販の「カビ取り剤」には次亜塩素酸という成分が入っています。水回りなど使える場所は限られてしまいますが、これを使えば99%は取り除けます。

パストリーゼを手に掛ける

ーーアルコールで除菌するのも効果はありますか?

矢口先生:
アルコールは70〜75%以上のものであればカビを取るのに有効です。ただ、市販の商品だとアルコールが20%そこそこのものが多く、それだとカビを退治するほどの強さはありません。

アルコール度数の高いスプレーを選ぶようにしてください。

アルコールにはカビによる黒ずみを落とす力はないので、もし黒ずんでいるようなら「カビ取り剤」を活用しましょう。

カビができにくい環境を作ろう

フローリングに掃除機をかける

おうちのカビ対策で大切なのは「湿度」「栄養」の管理でした。そうはいっても、頻繁に掃除する時間も元気もない…という人が多いと思います。

すべての部屋にカビ対策が必要なわけではありません。カビが生えやすい部屋とそうでない部屋があるので、まずはカビ対策が必要な部屋を見分けることからはじめてみてはいかがでしょうか。

神経質になりすぎず、カビの特性を知って、うまくメリハリをつけてカビ対策してあげましょう。