「たわし」って、知ってはいてもあまり使う機会がないという人も多いのではないでしょうか。どんなシーンで使うのか、どんな使い方かなど、意外とわからないことも多いですよね。

コジカジ編集部内でも使っているメンバーはおらず、どんなときに使うのだろう…?と疑問がでてきました。

そこで、100年ものあいだ続く老舗のメーカーの「亀の子束子西尾商店」さんに、たわしについて根掘り葉掘り聞いてみることにしました。

実際にお話を聞くと、その奥深さに圧倒されっぱなし…。「たわし」ってどこか古めかしいイメージがありましたが、100年も使われているのには、しっかりとした理由があったんです。その魅力を全3回にわけて紹介していきます。

2014年に東京にオープンした世界初の「亀の子束子専門店」

今回おとずれたのは、東京都台東区にある「亀の子束子 谷中店」。たわし作りの老舗である亀の子束子西尾商店さんが「たわしのアンテナショップ」として2014年にオープンした、世界初の亀の子束子専門店です。

亀の子束子 店舗外観
時間:11:00~18:00
定休:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
電話:03-5842-1907
住所:東京都 台東区 谷中 2-5-14
地下鉄千代田線 千駄木駅 出口1 団子坂方面改札 徒歩6分

白を貴重とした外観で、カフェや雑貨店のようなオシャレなたたずまい。

亀の子束子 入り口
お店の外では巨大なたわしがお出迎えしてくれました。

亀の子束子 店内 商品棚
店内に入ってみると、商品棚にはさまざまなたわしが。

亀の子束子 オリジナルTシャツ
亀の子束子 健康束子
たわし以外にも、Tシャツやマグカップ、手ぬぐい、オリジナルの前掛けなどさまざまなグッズがずらり。

亀の子束子 バレンタイン仕様
取材時はバレンタイン時期ということもあって、店頭にはバレンタイン仕様のかわいらしい飾り着けも。

スタイリッシュな空間に、見たこともないような、たわしがたくさん並んでいるので、「あれ?自分が想像していたのと違うぞ…?」と、編集部のたわしに対するイメージも一転。

亀の子束子谷中店 店長の志垣さん
今回は、亀の子束子谷中店で店長をつとめる、志垣(しがき)さんに亀の子束子について詳しくうかがいました。

亀の子束子ってなんですか…?

亀の子束子
お客さんにたわしの説明することが多い志垣さん。さっそくですが、「たわしって何?」という疑問をストレートにぶつけてみました。

志垣さん:
たわしは、シュロやパームといった植物の実、皮、根などの素材を束ねて、洗い物や掃除に使う道具のこと。

実は、初代社長の西尾正左衛門はもともとシュロを使って、靴拭きマットを発明して販売していました。ところが、体重の重みで毛先がつぶれるという欠点から、大量に返品が出て。靴拭きマットじゃ使えないな…と思っていたそんなある日、奥さんがマットの素材のシュロを使って障子の桟を掃除していたのをヒントに、新たに洗浄用の道具として作ったのがたわしでした。

で、たわしを水に浸している状態と亀が似ていたこと、親しみやすくなるよう「子」をつけて『亀の子束子』という名前に。亀は長寿で縁起がよく、水に縁もありますからね。

なので、「たわし」は道具自体の総称で、いまでも「亀の子束子」というと、亀の子束子西尾商店のオレンジ色のパッケージに入っているたわしのことを指すんです。商標登録もしていて、広辞苑にも載っているんですよ。

スポンジにも負けないたわしのよさ

まな板 収納
たわしは繊維が硬そうで、「掃除に使うと洗ったものを傷つけてしまうんじゃ…」と不安に感じている人も多いはず。実際のところどうなのでしょうか?

志垣さん:
たわしって皆さんが思っている以上にたくさん使いみちがあります。

特に、まな板や包丁、ザル、フライパンといったキッチンツールを洗うときに便利。スポンジとは違って、細かいキズなどの隙間の汚れもしっかりとかき出してくれるので、汚れを都度都度落とせて蓄積しません

平面が多いものを洗うときは、ピタッとくっつくスポンジを。デコボコしたものを洗うときにはたわし、と使い分けるのがおすすめです。

「たわしならキッチンツールの汚れをしっかり落とせて、漂白除菌などもしなくてすむ!」と、好んで使い続けているお客さんも多いのだそう。

亀の子束子西尾商店が守る、たわし作りへのこだわり

亀の子束子
亀の子束子の誕生秘話やスポンジとの違いなどを聞いて、「知らないことってたくさんあるなぁ…」と店内をキョロキョロ見渡していると、志垣さんが教えてくれました。

志垣さん:

ここに並んでいるたわしは、お台所用にしても、掃除用にしても、天然素材を使っていてすべて手作り。もちろん、この小さいキーホルダー型のたわしも職人が作っています。小さいサイズだと均一に作るのが難しいんですけど、明治時代から作ってきたノウハウや職人の腕があるからこそ。

亀の子束子には『使うための束子を作る』というポリシーがあって、使えない束子は作らないんです。

そうして職人が1つ1つ手作りした束子は、さらに『繊維が出ていたら切りそろえる』とか20以上の検品項目でしっかりチェックしてから、出荷されています。

『亀の子束子』の魅力はパッケージにも…

亀の子束子
どこか古めかしいイメージがあったたわしですが、店内にはオシャレでかわいい商品が多く、種類もたくさんあって目移りするほど。

志垣さん:
このオレンジのパッケージで販売されているたわしが、亀の子束子西尾商店でも看板商品。なかでも、亀の子束子1号という商品は2013年のグッドデザイン賞で、長年人々に支持され優れたデザインに与えられる『ロングライフデザイン賞』を受賞しています。

亀の子束子のパッケージは、今でもレトロかわいいと人気なんですよ。

たわしってどこか古臭い印象があるかもしれませんが、私の感覚としては、改めてたわしが時代にあってきているなぁと感じていて。たわしを発明した当時とは、状況が大きくことなるものの、キッチンツールの予洗いにたわしを使うことで洗剤が少なくすむので節約につながるとか、『エコ』の観点から、たわしの価値が見直されてきている気がします。

亀の子束子 サイザル麻
「最近ではお土産の需要も高まり、女性にあげる人が多いので、箱に入ったタイプのたわしが人気。外国の方もけっこういらっしゃいます。」と志垣さん。

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こだわって作られたたわしには、魅力がたっぷり。今回の話を聞いておうちに一つ置いておくのもいいなぁ…と感じました。

一口にたわしといっても店内にいろいろなたわしがあり、それぞれ違いもありそう。そこで志垣さんにたわしの種類についても詳しくお聞きしたので、【中編】で紹介します。お楽しみに。