亀の子束子についての本特集。【前編】では亀の子束子 谷中店の店長・志垣(しがき)さんに、亀の子束子の歴史や魅力をお聞きしました。

今回の【中編】で紹介したいのが、たわしの種類について。

たわしって1種類だけじゃないの?と思ったかもしれませんが、実は繊維の硬さや形状で用途はさまざまあるんです。掃除したい場所や洗いたいものにあわせてたわしの種類を選ぶと、キズもつかず、効率的に汚れを落とせますよ!

「たわしを使うとキズがつく」と思ってない?

亀の子束子を紹介する志垣さん
洗い物や掃除でたわしを使ってみようかなと考えても、たわしのような固いものでゴシゴシこすると細かいキズがつきそうなイメージってありませんか?

使っても大丈夫なのかがわからず、ためらってしまいますよね。実際のところどうなのでしょうか。

志垣さん:
たわしって1種類だけを想像されがちですが、実はたくさん種類があります。固いものだけじゃなくて、水に濡らすと繊維が柔らかくなるタイプもあります。これを使えば素材をほとんど傷つけることがありません。

亀の子束子西尾商店には素材違いで3種類のたわしがある

亀の子束子の主な素材3種
たしかに店内を見渡すと、色や形の違うたくさんのたわしが並んでいます。いったいどんな種類があるのでしょうか。

志垣さん:

ここに並ぶたわしは素材の種類で3つに大別できます。左から、薄茶色の「パーム」、こげ茶色の「棕櫚(シュロ)」、白い「サイザル麻」の3つの素材です。

たわしといってみなさんが真っ先に思い浮かべる、茶色の硬い繊維のものは、実はほとんどが「パーム」のことなんですよ。

たわしの原料
そう言って、実際にパームの原料のココナッツも見せてくれました。

【亀の子束子西尾商店に聞く】「パーム」のたわしの魅力とは…?

亀の子束子
多くの人がイメージするオレンジ色のパッケージの亀の子束子は、「パーム」素材からできたたわしなのだそう。

志垣さん:
おばあちゃんから小さい子まで、たわしといえばコレ!というのが、このパーム。ココナッツの殻の繊維が原料の素材です。

3つの素材のなかでも一番繊維が硬く、繊維の先端で凹凸につまった汚れをしっかりかきだしてくれます。

なので、パームのたわしを紹介するときは「点で洗う」とよく伝えています。汚れをかき出すのに一番効果を発揮してくれます。

たとえば、野菜を洗うときに使うと、土といっしょに野菜の薄皮も削ぎ落とすこともできます。

ただし、繊維が硬いので、ホーローや鋳物などに使うと傷つけることもあるのだとか。

たわし選びで失敗しないよう、志垣さんは毎回お客さんに「具体的にどんなものを洗うつもりですか?」と聞いているそうです。

次のように用途が決まっている人は、パームのたわしがおすすめですよ。

〜パームのたわしはこんな人向き〜
● 鉄のフライパンを洗いたい
● ザルなどのキッチンツールをしっかり洗いたい
● 根菜の土や薄皮を落としたい

パーム素材の亀の子束子
亀の子束子には、パーム素材で大きさのちがう4種類があります。

大きいと1回で広い範囲をこすれて便利。用途と使う人の手の大きさにあわせて、たわしのサイズを選ぶとよいとのことでした。

【亀の子束子西尾商店に聞く】「棕櫚(シュロ)」のたわしの特徴は?

棕櫚(シュロ)の亀の子束子
次に紹介してくれたのが棕櫚(シュロ)のたわし、「棕櫚たわし極〆」というシリーズです。

志垣さん:
棕櫚のたわしは、名前の通り棕櫚の木の皮からつくられています。たわしに使われている素材のなかでも、一番歴史が古く、たわし発明の原点がこの素材です。

パームよりも繊維が細いので、しっかり素材に密着して汚れをかき出すのが特徴です。パームが「点」なのに対して、棕櫚は「腰で洗う」と表現していします。

パームとは違い、野菜に使った場合は土だけを落とせるイメージです。素材をやさしく洗えるので、食器全般に使えます。

3つの素材のなかで一番乾きが早くお手入れがしやすい素材。強度と柔軟性をあわせもっているので、何を洗うにも重宝するとのことでした。たわしビギナーの方は棕櫚を使っておくと安心です。

棕櫚(シュロ)素材の亀の子束子
亀の子束子と同じように、サイズ違いでいくつか種類があるので、購入時は用途や手の大きさにあったものを選んでくださいね。

【亀の子束子西尾商店に聞く】「サイザル麻」のたわしのいいところ

サイザル麻の亀の子束子
棕櫚のたわしって本当にキズがつかないの…?と心配性な人でも使えるたわしがあるそう。それがサイザル麻を使った「白いたわし」シリーズ。

志垣さん:
5年前にキッチンコラムニストの石黒智子さんと共同開発したのが、このサイザル麻を使った白いたわし。

高い柔軟性と吸水性が特徴です。水で濡らすとコシがなくなるので、繊維1本1本の『線で洗う』のを得意としています。これならスポンジ感覚で使えて、テフロン加工のフライパンも洗えます。

ちなみに、棕櫚のたわしよりも乾きが遅いので、まんなかに穴を開けることで乾きが早まる工夫をしてあります。

大根、トマトの皮、ズッキーニ、レモン、オレンジなどの薄い皮の食材を予洗いするときなんかにも使えますよ。

サイザル麻の亀の子束子
サイズは大と小の2種類のみ。握ったときの手のフィット感で選ぶとよいとのことでした。

見た目がベーグルみたいでかわいらしく、清潔感のある白い色がキッチンに映えそうですよね。

亀の子束子西尾商店には3つの素材を活かした変わり種も

亀の子束子 シマシマ
亀の子束子西尾商店では、見た目が縞模様になった「シマシマ」や細長い形をした「ロングたわし」という商品なども販売しています。

それらの素材も、基本的には先ほど紹介した3種類のうちのいずれかで作られています。

亀の子束子 よりどころ ハーフ&ハード
たとえば、ロングたわしシリーズはパームがベースで、漂白して茶色を白くした繊維を使ったり、ねじったりしています。どれも基本の素材がパームなので、汚れをかき出す力が強く、丈夫なのが特徴。

握りやすさや見た目を追求したい人は、形のことなるたわしを使うのもおもしろいですよ。

ボディケア用のたわしも販売している亀の子束子西尾商店

亀の子束子の健康束子
亀の子束子西尾商店では、体のマッサージに使える「健康たわし」と呼ばれるたわしも販売しています。

健康たわしにもパーム、棕櫚、サイザル麻のそれぞれの素材で作られた商品があり、刺激を求める人は繊維の硬いパームの健康たわしを好んで選ぶそうですよ。

志垣さん:
昔から、乾布摩擦のようにたわしで体をマッサージするおじいちゃんおばあちゃんがいて、亀の子束子西尾商店でも35年前からは健康たわしシリーズを販売しています。

背中の真ん中まで届くように持ち手のヒモがつけてあって、手ぬぐいだと届かない肩甲骨まわりにもフィットします。

角質が落ちたり、血行がよくなったり、むくみが取れて睡眠が深くなったりと効果は人によってさまざま。

【番外編】キッチン周りの調理道具には「カルカヤ」のたわしも便利

カルカヤの亀の子束子
番外編として、3つの素材以外についても教えていただきました。

志垣さん:
カルカヤは苅萱という草の根を束ねたもの。鉄のフライパンの縁、ガスコンロの五徳などにグッと押しつけると、毛先が開いて汚れにくっついてかき出してくれます。

水やお湯だけで、クレンザーのように汚れを落とせますよ。

使っていくうちに、消しゴムのように削れて短くなってきたら、輪状の金具をはずして使うそう。油汚れや茶渋落としにぜひ活用してみてください。

おうちにあった亀の子たわしの探し方

  1. まずはどんな用途で使うのかイメージする。
  2. 用途に応じてたわしの「素材」を選ぶ。
  3. その素材から、「握りやすさ」や「見た目」があうものを選ぶ。

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一口にたわしといっても、「パーム」「棕櫚」「サイザル麻」の3素材 に「色」「サイズ」「形状」の組み合わせで無数に種類があることがわかりました。

実際にどう使うかを考えて、自分のおうちにあったたわしを選んでみてください。

最終回では、たわしの使い方について紹介します。