整理収納アドバイザーの水谷妙子さんが説く整理収納法の実践編をお送りします。

今回は、収納を考える前に取り組むべき「整理」の考え方を教えてもらいました。どんなふうに進めればいいのか、実例も踏まえながら紹介します。

「整理」はほとんどの人が苦手なもの

水谷さん インタビュー
「整理」が大事とはわかっても、それがなかなかできないというのが正直なところ。どうして「整理」がうまくできないのでしょうか?

水谷さん:
整理でつまづく人は、持っているモノを「いる」か「いらない」か判断しているからなんです。

「いる」「いらない」っていうのはとても主観的な判断軸。しかも、「いらない」と判断するのは「捨てる」というイメージに直結するんですね。せっかく手に入れたモノを捨てるのは本能的にイヤだと感じやすいので、「いらない」と判断するハードルが上がってしまう。

その結果、正しく整理ができずに、モノだけが増えていっちゃうんですね。そしてモノが増えていくと、膨大なモノを一つひとつ判断するのが億劫になってしまうんです。

整理をするときは「客観的な判断軸をベースに考えることが重要です」と水谷さん。

次からは順番に「整理」するときのポイントを紹介していきます。こちらを参考に、おうちのモノと向き合ってみてください。

【整理のコツ①】「使っている」「使っていない」で区別する

水谷さん 食器棚の整理
整理するときは、客観的に「1年間で1度でも使ったかどうか」を判断軸にします。まずは思い入れは忘れて、使っているかどうかだけで考えます。

水谷さん:
1年のうち1度でも使ったなら「使っている」で、それ以外は「使っていない」と考えれば、客観的に線引きができます。

クリスマスツリーやお雛様といった季節用品は、1年に1回は出すので「使っている」と判断して問題ありません。

具体的に「使ってない」と判断するものとしては、たとえば出が悪くなってなんとなく使わなくなってしまったボールペン、ダブっているお鍋やキッチンツール、サイズアウトしちゃった子供の服など。なんとなく置いているモノっていうのが結構でてきますよ。

【整理のコツ②】「使っている」モノだけを手元に残す

水谷さん 子供の古いおもちゃ
手の届く場所に置くのは「使っている」モノのなかでも、週に1回以上出番がある「よく使う」モノだけにすることが大切です。「使っていない」と判断したモノは処分し、「使っている」モノでも「あまり使っていない」モノは収納場所を別にします。

水谷さん:
「使っていない」と判断したモノのなかには、思い出深いモノや「いつか使うかも」と思っているモノもあると思います。そういう場合は、ムリに処分しなくても構いません。

ただ、「あまり使っていない」モノまで使いやすい場所に置いておく必要はないので、別の収納スペースに移しましょう。すぐ手に取れる場所に置く必要はありませんからね。

思い出の服とか記念でもらった食器とかも「よく使う」モノと同じスペースに置くからややこしくなるんです。それらを日用品として使わないのであれば手が届きにくい場所で構わないので、まとめて収納してあげてください。

そんなことないでしょって思う人もいるかもしれませんが、いざ整理を始めたら、思い出の食器が食器棚の使い勝手のいい場所を陣取ってたりって意外とよくありますよ。

【整理のコツ③】暮らしにあわせて「適正量」を見極める

水谷さん シンク下の収納
使っているモノだけに整理したら、普段の暮らしにあわせた「適正量」を検討してみてください。日々の生活のなかで何がどれくらいあれば足りるのか、つまり普段から自分が「使いこなせる量」はどれくらいなのか考えることが大切です。

水谷さん:
モノはどんなものであれ寿命があります。その寿命を踏まえた上で「適正量」を考えてみましょう。たとえば、ティッシュや洗剤など日々消費するものなら、どれくらいでなくなるから、ストックはどれくらいあれば十分だなと把握できますよね。

一方で、お皿や衣類、タオルとなると、どれくらいが適正量なのかがパッとは思い浮かばなくなる人が多いんですね。そういうモノは毎日の生活サイクルを振り返って最低限必要な量を考えてみてください。

たとえば毎日洗濯をしているおうちの場合、極端にいえば、タオルなんかは2枚あれば足りるわけです。1枚を使っているうちにもう1枚を洗濯しておけば回りますよね。ただそれだと心もとないから洗濯できなかった予備として1〜2枚余計にあればいいですよねと。洗濯の頻度が1週間に1回なら、7枚はほしいとなります。

そういう感じで、各家庭の現実と理想を考えてみてもらえたらと思います。

ライフスタイルの変化にあわせて「整理」し直そう

水谷さん 子供の衣類収納
「整理」と聞くとただモノを処分するための作業とばかり思いがちですが、その本質は自分の生活を見つめ直すことなんだと感じます。

そして、「整理は一度やっておしまいというものではないんです」と、水谷さんは付け加えてくれました。

水谷さん:
ライフスタイルが変化すると、使うモノが変化します。

たとえば私は独立してから着る洋服が少なくてすむようになりました。会社員の頃は洋服をたくさんもっていましたが、独立すると同じ人と毎日会うってことがなくなりますから。職場で毎日同じ人と会うなら毎回同じ服っていうのは気が引けますが、会う人が毎日違えば同じ服でも気になりませんよね。働き方の変化は、クローゼットのなかを見直すよいタイミングです。

ほかにも、おうちに食洗機を導入したら、それで洗えるお皿だけを使ったほうが家事はラク。食洗機で洗えないお皿を手洗いするくらいだったら、食洗機で洗えて確実に汚れが落ちるお皿を増やしちゃえばいい。食洗機の導入は、食器棚の中を見直すよいタイミングになります。

こういうふうにライフスタイルが変化したら、それにあわせて使うものが変わっているはず。「整理」は一度やっておしまいではなく、ライフスタイルの変化にあわせて見直してほしいなと思いますね。

水谷さんが教える「整理のコツ」まとめ

  1. 「使っている」「使っていない」で区別する
  2. 「使っている」モノだけを手元に残す
  3. 暮らしにあわせて「適正量」を見極める

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「整理」が苦手な人ほど、主観的に「いる・いらない」で判断するよりも客観的な「使っている・使っていない」という基準を設けることで進みやすくなりますね。これならやってみてもいいかもと感じる人も多いのではないでしょうか。

次回は、整理に続いて「収納」のポイントや具体的なやり方を紹介します。