「いちいち言わなくても感謝なんてものは、ちゃんと相手に伝わるもんだ」

昔、うちの父はこんなふうに言っていました。ぼく自身も「そんなものかな」なんて。

だけど、自分が結婚をして妻に言われたのです。「思っているなら言ってくれなきゃわからない」と。それからは慣れない感謝を伝えようと、試行錯誤の連続でした。

感謝を伝えられなかったぼくが、どうやって家族に「感謝」を伝えられるようになったのか。家族で気持ちよく家事をシェアしていくために大切な、本当に「伝わる」感謝の伝え方を紹介します。

ぜひ、ママとパパで一緒に読んでみてください。

感謝を伝える=「ありがとう」と言うではない

夫婦で家事をシェアしていくには、「感謝」を伝え合うことはとっても大切です。

・家事参加に消極的なパパが家事をしてくれたなら、ママはパパへ「ちゃんと感謝を伝える」。

・普段からママに家事を任せっぱなしなら、パパはママへ「ちゃんと感謝を伝える」。

ただ、「ちゃんと感謝を伝える」って意外とむずかしいんです。

「感謝は言わなくても伝わるもんだ」と父の言葉をなんとなく受け入れてしまっていたぼくには、「感謝を伝える」というのは「ありがとう」と言うだけでいいと思っていました。でも、そうではありませんでした。

感謝の言葉にしっかりと「態度」が重なることで、初めて相手に「伝わる表現」になるのです。

たとえば、夜ご飯のときに「いただきます!」と言っている自分の姿を思い出してください。誰に向かって言っていますか?茶碗やお皿を見ながら呪文のように口にしていたり、TV見ながらつぶやいたりしていませんか?

もしそうなら「いただきます!」は作ってくれた人に向かって、その人を見ながら言ってみましょう。「ママ、いただきます!」と言うように声をかけるのもいいでしょう。

顔を向ける、ちゃんと呼びかけるなど態度を重ねることで、感謝の気持ちはがぜん伝わりやすくなります。

「ありがとう」は、感謝を表現する言葉のひとつでしかないのです。上っ面の言葉やルーチンになった言葉では、なにも伝わりません。

感謝は「言えばいい」ものではなく、相手にちゃんと「伝わる」ことが必要なんです。

行動で表現すれば感謝の気持ちは何倍も伝わる!

我が家では、感謝をしっかり伝えるために「行動で表す」ことを心がけています。これは、普段の「ありがとう」の気持ちが何倍にも膨れ上がって伝わるようになる、おすすめの方法です。

特に我が家で絶大な効果を発揮している5つの「感謝を表す行動」を紹介します。

1. ちょっとしたプレゼント

仕事で遅くなる日が続いて相手に家事育児の負担をかけてしまったとき、助けてもらったなと感じたときなど、ちょっとしたプレゼントを買って帰ります。我が家では、仕事の帰り道に相手の好きなアイスやビールなどを買うことが多いです。

2. 簡単マッサージ

「お互い、最近疲れ気味だよね」ってときに感謝の気持ちを込めて、足や肩のマッサージをし合います。子どもが風邪を引いて交代で仕事の調整をし合ったときや、なんとなく相手が疲れてそうだなと思ったときに効果的です。マッサージをしていると自然とコミュニケーションも生まれます。

3. 感謝メモ

フセンやメモなどに感謝の気持ちを書いて渡します。「洗い物ありがとう」「今日も一日おつかれさま!」など、メッセージはなんでもOK。夜遅いひとり晩ごはんやちょっとしたプレゼントに添えると効果的です。文字にして渡すことで、聞き流されることも防げるし、感謝された喜びをひとりでじっくり噛みしめることができます。

4. 子どもと一緒にベタ褒め

子どもの力は絶大です。ちょっとしたプレゼントや感謝メモと掛け合わせて「パパ(ママ)いつもありがとー!」なんて伝えたらメロメロになってしまうこと間違いなしです。

5. 第三者の声で感謝を表現

人は直接評価されるよりも、間接的に評価をされるとうれしいもの。「SNSでパパが家事してくれたことつぶやいたら、めっちゃ『いいね』ついた!」という風に、第三者から認められたと感じられるように表現できるといいですよ。SNSじゃなくて、友だちにほめられたというのでもOK。

こんな感じで、感謝を表す行動にはさまざまなものがあります。

ほかにもたくさんの感謝アクションがあるはず!なので、ぜひ自分たちなりの方法を見つけていってください。

感謝スパイラルが家族に変化を生み出す

「ちゃんと感謝を伝える」って最初は気恥ずかしいので、自分にできるかなと思っている人もいるかも知れません。

でも、最初にお伝えしたようにぼくは感謝を伝えるのが大の苦手でしたが、今では態度や行動で目一杯感謝を伝えられています

これができるようになったのは、妻のおかげなんです。

当時、少しずつ感謝を言葉にするようになっても、ぼくのいう「ありがとう」の声は小さく、「え? なんか言った?」とまったく届かない。聞き直されて繰り返すのも恥ずかしく、「なんでもない」なんてごまかしたり。「洗濯してくれてありがとう」「ご飯をつくってくれてありがとう」思っていても、毎度毎度は嘘っぽくなると遠慮がちになったり。

だけど妻はいつも、大げさなくらいにぼくに感謝を伝えてくれていました

「あなたの作るご飯をいつも食べられてわたしは幸せものだ!」
「遅くなってごめんね。おいしいアイスを買ってきたから後で食べよう!」

ぼくはそんな妻の姿から、少しずつ感謝の伝え方を学び、感謝を伝えることへの恥ずかしさから開放されていきました。

そして結婚して1年か2年目くらいの頃、「あなたが、だんだん思ったことを話してくれるようになってきてくれてうれしい」と、妻に言われてハッしました。

妻がいろんな形で感謝を伝え続けてくれたおかげで、ぼくもいつの間にか感謝を示すことができるようになっていたのだと。そして、わが家では感謝を示し合うこと、それによってお互いをリスペクトし合うことが当たり前になってきていたことに。

家事や育児のこととなると、「親だから」とか「夫婦だから」とか、感謝するという当たり前のことがおざなりにされがちです。でも、お互いがしっかりと感謝を伝え合うことで、互いに「やってよかった」と思えるようになります。そして、次も助け合おうという気持ちが生まれていくのだと思います。

どちらかが感謝を表現し始めたからといって、すぐに何かが変わるわけではありません。それでも、これを読んで「感謝が行き来する家族っていいな」と思ってもらえたなら、まずは自分から感謝のスパイラルを生み出す取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。